TVでも取り上げられる機会の多くなったピロリ菌ですが、ピロリ菌はウレアーゼと呼ばれる酵素を産生し、この酵素で胃粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、生じたアンモニアで、局所的に胃酸を中和することによって胃という強酸下でも生き続けることができます。これによって慢性的な胃粘膜の炎症を引き起こし、胃・十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎の原因となると考えられています。また、ピロリ菌に感染していなければ胃がんの発症は少ないという統計上のデータも存在し、世界的にはピロリ菌が胃がんの発がん促進物質と考えられています。
胃がんリスク検査は、採血で出来る簡便な胃がん検診で、ピロリ菌の有無と胃粘膜萎縮の程度(血清ペプシノゲン値)を測定し、胃がんになりやすい状態かどうかをA~Dの4群に分類する新しい検診法です。早期胃がんの発見率はバリウムで行う胃の透視検査よりも2倍高いと言われ、スクリーニング検査としては大変優れたものと考えられています。
「ペプシノゲン」とは、胃の細胞から分泌される消化酵素・ペプシンのもととなる物質です。ペプシノゲンは一部が血中に流れ出しますので、血中濃度を測定することにより胃粘膜でのペプシノゲン生産度が分かり、血清ペプシノゲン量が少ないと胃粘膜が萎縮しているということになります。ペプシノゲンにはⅠとⅡの2つのタイプがあり、ペプシノゲンIは主に胃底腺から分泌されるのに対し、ペプシノゲンIIは胃底腺のほか噴門腺や幽門腺、十二指腸腺からも分泌さます。胃粘膜の萎縮が進行すると、胃底腺領域は萎縮し幽門腺領域が拡張するため、ペプシノゲンIに対してIIの量が相対的に増加してペプシノゲンI/II比が低下し、これにより胃底腺領域の胃粘膜の萎縮の程度を予測出来ます。 検査でピロリがいることがわかったら、1週間の除菌療法を、B以上のリスクと診断された方は、リスクに応じた間隔で胃カメラ検査おすすめします。
がんは、日本人の死因の第1位であり、 死因別割合は全体の4分の1以上を占めています。 また、がんを患う人は、男性で60%、女性で45%、 つまり、2人に1人は「がん」にかかっており、 誰にでも発症し得る病気です。 しかし、がんは不治の病ではありません。 半分程度のがんは治ると言えます。更に、早期に発見できれば、9割は完治すると言われています。 がんは「早期発見・早期治療」がとても大切です。
がんの発症数を部位別でみると、男性では胃がんが1位・大腸がんが3位、 女性では大腸がんが2位・胃がんが3位で、男女ともに消化器がんは上位を占めています。 しかし、消化器がんは、ほとんどが無症状で、進行するまで気づかないことが多いのです。 臓器別の生存率を見ると、他の部位と比較しても消化器がんの5年生存率は低いです。 特に、膵臓がんは5年生存率ワースト1と言われており、 男性は7.1%、女性は6.9%と非常に予後が悪いがんです。しかし、膵臓がんの5年生存率をステージ別に見ると、ステージ1で57%、ステージ2で44%となっており、 早期発見、早期治療が非常に重要であることが分かります。
マイクロアレイとは、がんなどの異物に対する体の反応を遺伝子レベル(mRNAの発現)で測定できる最新の技術です。 血液が「がん細胞」に反応し、細胞死に向かわせようとする状況を世界で初めて遺伝子レベルでとらえることができるようになりました。腫瘍マーカー検査に比べ、消化器がんの有無判別に関しては感度(実際に病気を罹っている人のうち陽性と出る割合)が実に98.5%と飛び抜けて高いのがこの検査の特徴で、膵臓がんを含む消化器がんの早期発見に大変有用といえます。
がん細胞は、さまざまな生活要因習慣、環境により正常細胞の遺伝子が複数傷つくことで、発生し、増殖していきます。したがってがん細胞とは、数個~10個程度の遺伝子の多重変異により、 無制限に細胞分裂する能力・血管を新生する能力・新しい組織に転移する能力をもった細胞といえます。
このように、がん細胞の発生・増殖には、遺伝子の傷、活性化、不活性化などが深く関わっており、このため、これらの状況を調べるがん遺伝子検査が有効と考えられています。
本検査は、がんに対する「リスク評価」を、より正確に行うために、Free DNA濃度測定および多数の遺伝子について、変異解析、発現解析、メチル化解析を行い、総合的に「がんリスク」を評価します。初回のリスク評価には、総合検査コースまたはリスク評価コースが、2回目以降の予防管理には、リスク評価コースが適しています。
●総合検査コース
1.Free DNA濃度測定
2.発現解析
3.がんリスク評価
4.変異解析
5.メチル化解析
●リスク評価コース
1.Free DNA濃度測定
2.発現解析
3.がんリスク評価
【がんリスク評価】
以下に示すFreeDNA濃度測定と発現解析の結果から得られるデータと被検者様の年齢を、特許申請中の独自のアルゴリズムにあてはめてがんリスク値を判定し、段階評価します。(A-D評価)
【Free DNA濃度測定】
血中には、白血球や赤血球といった血球系の細胞をはじめ、臓器由来の死んだ細胞中の遺伝子やタンパク質など種々の生体物質が混在しています。がん細胞においては、その活発な成長の一方で細胞死も起こしています。その死んだがん細胞由来の遺伝子やタンパク質が積極的に血管中に流れ込むため、健常者と比べて担がん患者では、血中に存在するDNAの量(Free DNA) が増加する傾向があります。したがってFree DNAの濃度を測定することにより、がんのスクリーニング検査が可能であると考えられます。
ただし、この血中Free DNA濃度は、炎症などの他の要因でも上昇する場合があるため、Free DNA濃度が高値を示した場合はその原因ががん細胞由来かどうかの判断が必要となります。
【発現解析】
ある遺伝子が持つ遺伝情報は、その遺伝子の塩基配列がmRNAに転写され、その後タンパク質が合成されて初めて機能情報として発現します。したがって、がん関連遺伝子は突然変異を起こしただけではがん化は引き起こされません。しかし、その変異配列が転写、翻訳されると、異常タンパク質の機能が促進されることで過剰な細胞増殖が起こり、これががん化を引き起こします。
当検査では多数のがん関連遺伝子の発現状態を検出します。
【変異解析】
体を構成する全ての細胞は、それぞれ自分の遺伝子(人間では約3万個)を持っています。それらは、さまざまな原因によりある細胞の遺伝子配列に異常が起きることがあり、これを遺伝子の突然変異と呼んでいます。(※赤血球など一部の細胞を除きます。)
たとえば、日焼けすると紫外線で皮膚の細胞の遺伝子が突然変異を起こす場合があります。しかし、通常は遺伝子に突然変異が起こっても、ほとんどの場合は細胞が持つ修復機構や細胞の自殺機構(アポトーシス)などにより変異が排除されます。
しかし、もしこれが治らずに、5年から20年くらいかかって突然変異を持つ細胞が増え続けると、がんになる可能性があります。
がん遺伝子検査では、がん細胞において高頻度で突然変異を起こす部位(ホットスポット)の配列について調べることにより、それががん細胞由来かどうかを識別します。また、その突然変異の位置により、がんの部位や状態を推測するための情報を得ます。
【メチル化解析】
がん関連遺伝子の中には、無秩序な細胞増殖のブレーキの役割などを果たす「がん抑制遺伝子」と呼ばれるものがあります。このがん抑制遺伝子そのものは壊れていないが、その周辺にメチル基(CH3-)がたくさん付着することによりがん抑制遺伝子が発現しにくくなる(がん抑制遺伝子の情報をもとに作られるタンパク質の量が少なくなる)と、ブレーキの機能が果たせなくなります(不活性化)。
このメチル基の付着度合いを調べる検査がメチル化解析です。